築48年戸建リノベ|既存を活かした金沢の住まい
規模 | 124.62㎡(37.7坪) ※1階のみ |
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構造 | 木造 |
土地の価格が高騰している金沢市内で、エアコン1台で過ごせる断熱性能、写真家の妻のスタジオが併設できる広々とした住まいを、一人で借りれる住宅ローンの予算規模で実現した無謀とも言える過大要望を叶えたプロジェクトです。
過大要望を叶えるには予算的に新築では不可能で、中古物件を購入してリノベーションする選択しかありませんでした。
タイミング良く、家族構成の変化によって数年間空き家だった築48年の民家と出会い、ほぼ土地の価格のみで購入することができました。
リノベーションするからには、既存の住まいの良いところは残し、悪いところは直したり、より高い性能に向上させなければなりません。
中古物件購入前の時点で、可能な限り細部まで調査をしました。
<良いところ>
・木材がしっかりしていて、白蟻被害も深刻ではない。
・農家住宅のような田の字型の間取りで、間取り変更しやすい。
・加賀五彩の草色のジュラク壁が珍しい。
・真南に縁側と庭がある。
・外壁や屋根が途中で修繕されていて直さずに使えそう・
<悪いところ>
・断熱材が入っていない。
・耐震性能が怪しい。
・水廻りが古い。
まず、悪いところは徹底的に性能向上させました。
断熱は床にフェノールフォーム、壁と天井に30倍発泡のウレタン吹付け断熱を施し、窓はLow-E複層ガラスの内窓を取り付け、居住空間の約32帖を14畳用のエアコン1台で空調できるようにしました。
耐震性能は、簡易診断を行って、今回工事範囲の1階部分のみ筋交いや構造用合板を用いて補強しました。
2階は将来計画としてあります。
古い水廻りは全て最新のものに取り替えて、使い勝手や節水性を向上させました。
良いところは、積極的に残したり、上手く利用することで、リノベーションならではのデザインに落とし込んだり、コスト削減に努めました。
襖や障子で仕切られた田の字型の間取りのため、無理に柱を取らなくても建具を取るだけでLDKが確保できました。
柱を取らないことで、梁の補強が不要になり、コスト削減ができました。
草色のジュラク壁や組子の入った障子、雪見障子はそのまま残し、積み重ねられた歴史をインテリアとして表現しました。
ジュラク壁や障子が残ることで、どこか懐かしい祖父母の田舎の家だったり、実家だったりを感じさせる空間になり、不思議と落ち着いた気持になれる空間になりました。
今回新しく仕上げた内装仕上げは、既存の残す部分に合わせたものを選定し、既存のデザインが生きるように配慮しました。
ジュラク壁を残したいのでビニールクロスは張らずに、自然素材100%の塗り壁を採用し、床は既存の柱などの木部分にあった無垢材のフローリング、天井は塗り壁の施工が難しいのでシナ合板で、建具はシナ合板を使った造作とし、自然素材の塗り壁や木に囲まれた優しく、柔らかな雰囲気にまとめました。
今回のリノベーションで改めて気づかされたことがありました。
住まいを築くということは、そこに住む人たちだけではなく近隣にまで影響を及ぼすということです。
空き家になっていた住まいを購入して住むことで、ご近所さんに感謝されました。
50年前にできた宅地のコミュニティに若い人が入ってきたことや、空き家で防犯上の不安を感じていた所に明かりが点いたこと等、住まいを築くことで地域にも良い循環が生まれます。
家づくりは人づくりで、人づくりは地域づくりで、私たち家づくりに携わる人は目の前のお施主様の夢を叶え、その先にある地域を良くすることまで考えた仕事が必要ということを改めて実感しました。
リノベーションでもオシャレで、快適で、コストに見合って、地域に貢献できる住まいができます。