築100年!古民家の断熱性能向上リノベーション
構造 | 木造 |
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リフォームする理由は人それぞれある。
今回のお客様は長年住んでいた新興住宅地を出て、実家の大きな古民家に移り住んで、ゆったりとした時間を過ごしたいという理由でした。
家族や親族、友人、ご近所さん等、様々な人と過ごした思い出が詰まった住まいでしたが、断熱が一切無くてとても寒いのが悩みでした。
また農家住宅の系譜をたどった田の字型プランの間取りで、昔囲炉裏があった23帖余りの「おえ」は広いだけで使い勝手に困っていました。
以上のことから、①思い出を形に残すこと、②寒さ対策、③広いスペースを有効活用する、この3点が今回の設計のテーマとなりました。
①思い出を形に残す
この住まいの構造体がとにかく立派で、柱は195mm角、大梁は高さも幅も300mmを超えたものでした。
お客様もこの木材に思い入れがあり、リノベーション後も躯体が見えることを希望したため、住まいの思い出の象徴として柱や梁がきれいに見えるよう意匠計画をしました。
玄関からLDKにかけて木部を表し、その間にはガラスの開口部を設けて、悠々と伸びる梁が見えるようにしました。
このガラスの開口部は少し暗かった玄関にLDKから光を分けてあげる効果や、視線が抜ける開放感が得られる効果、玄関に来た来客者が向こう側(LDK)に行ってみたくなるわくわく感を与える効果があります。
思い出としての柱や梁をきっかけに、新しく開放感というアクセントを加えて全体をデザインしました。
②寒さ対策
大きな住まいだったため、全てを完璧に断熱するにはコストがかかります。
そこでお客様のライフスタイルをヒアリングし、建物全体で断熱する部分としない部分に分けて考えました。
断熱する部分は床にフェノールフォーム45mm、壁に77mmと天井に110mmの現場発泡吹付け断熱材を施し、最近の新築住宅並みの断熱性能を確保しました。
細部に気密テープを貼ったり、入隅部分で発生しやすい吹付け断熱の欠損部分は1か所ずつ確認し処理することで、気密性能も確保しました。
夏場のエアコンの効きは以前の住まいとは雲泥の差とお客様もおっしゃってくれましたし、これから過ごす厳しい冬により変化を体感することと思います。
③広いスペースの有効活用
以前北側の薄暗い場所にあった台所や居間の配置を見直し、南側に開口部のある23帖余りの「おえ」をLDKとしてリノベーションしました。
一般的なLDKであれば15帖程度で実現できますが、23帖余りとかなり余裕があったため奥様希望のアイランド型のキッチンにすることができました。
またリビングとダイニングキッチンそれぞれの性格を考えて、天井高さに変化を与えることで、開放感のあるリビング、落ち着いて食事ができるダイニングキッチンとして空間をつくることができました。
また玄関もとても広かったため、背の高さぐらいの間仕切りを設けて、シューズクローク兼納戸を配置しました。
これで玄関先もLDKも片付けばしやすくなるはずです。
ちなみに元々あった台所と居間は、構造補強を施し、外部に電動シャッターを付けて、2台分のインナーガレージとなっています。
ただきれいに直すリフォームではなく、お客様の要望や住まいのポテンシャルを活かして住まいの性能を向上させるリノベーションは、これからどんどん需要が増える注目の分野です。